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原価意識の朝礼話材



10.知らないではすまされない会社の税金@

 会社にお勤めの方は、会社の税金といっても、あまりピンとこないと思います。経営陣や経理部の方ならともかく、それ以外の従業員には、会社の税金など縁の無いものだと考えられがちです。しかし会社の儲けの半分近くは税金にもっていかれると聞けば、いかに税金が会社にとって切っても切れない関係であるかがわかると思います。
 また、日常的に経費となっている中にもいつも税金がつきまといます。

儲けに対する税金
「この会社は、いくら利益をあげていますか?」というよくでる質問に対する回答は、会計上の儲けに対する税金が課される前の利益である「税引前当期純利益金額」を指すことが多いと思われます。
では、この「税引前当期純利益金額」に対して税金が課されるのでしょうか?答えはNOです。儲けに対する税金を計算する場合には、税金の計算に必要な利益である「課税所得」を計算しなくてはなりません。
この計算方法は、会計上の税引後の利益(当期純利益金額A)からスタートし、以下の計算によって課税所得Bを計算します。

損益計算書                      法人税の課税所得
収益                           当期純利益金額A
−)費用                       加算+)益金算入
税引前当期純利益金額                    損金不算入
−)法人税等                     減算−)益金不算入
  法人税等調整額                      損金算入        
当期純利益金額A                     課税所得金額B

そしてこの計算された「課税所得」を基に、法人税等(国に対する法人税、都道府県に対する都道府県民税及び事業税、市町村に対する市町村民税)が計算され、会社は納付する義務を負うのです。法人税等の負担は課税所得金額Bの44.79%(但し、法人税のうち事業税は、翌年度の費用となるため、実質的税負担は40.87%)です。

儲け以外の税金
会社の儲けに対する税金を簡単に説明しましたが、これ以外にも会社と関係がある税金は消費税をはじめまだまだたくさんあります。
また、ほとんどの会社では決算書の販売費及び一般管理費にある「租税公課」に儲け以外の税金がたっぷりと含まれています。

(1)登録免許税 会社や不動産を登記するときにかかる税金です。国の税金で間接税で普通税です。
(2)印紙税 契約書や領収書、手形などの文書を作成したときにかかる税金です。国の税金で間接税で普通税です。
(3)固定資産税 会社が所有している不動産等の資産に対してかかる税金です。通常、市町村の税金で直接税で普通税です。
(4)不動産取得税 土地や建物を有償・無償、投機の有無を問わずに取得したときにかかります。都道府県の税金で直接税で普通税です。
(5)事業所税 指定都市などの所在する一定規模以上の事務所や事業所にかかります。市町村の税金で直接税で普通税です。
(6)自動車税 会社が自動車を所有している場合にかかります。都道府県の税金で直接税で普通税です。
(7)軽自動車税 会社が原動機付自転車や軽自動車などを所有しているときにかかります。市町村の税金で直接税で普通税です。
(8)自動車取得税 会社が自動車を取得したときにかかります。都道府県の税金で直接税で目的税です。

 以上代表的な税金をあげてみました。この他にも、会社とは直接無関係な贈与税や相続税等を加えると税金の種類はなんと50種類近くもあります。驚きですね。
 簡単に説明しましたが、このように、会社は様々な税金を支払っています。自分は無関係だと思わず十分に認識し、通常の原価やコストと同様に意識することが大切でしょう。


11.知らないではすまされない会社の税金A

収入印紙
 会社に保管の証憑書を見ていますと、収入印紙の消印が不適切なものが見受けられます。収入印紙を消す方法は、印章または署名ですることになっていますが、二重線を引いて消している場合は、消印をしたとは認められず、印紙相当額の過怠税が課されることのなりますので、営業担当者等が領収書を受け取る際や交付する際に注意してもらう必要があります。また、仮領収書であっても、収入印紙を貼付する必要があります。

飲食費
今年の税制改正で、1名当たり5,000円以下の飲食代は店が居酒屋であっても交際費に含めなくてよくなりました。そこで、得意先等を接待する場合は、少し我慢して1名当たり5,000円以下になるようにすると会社にとって節税になります。ただし、接待した相手側の氏名等を記載した書類等を保管しておく必要があります。

少額資産
青色申告の中小企業が、30万円未満の資産を購入した場合、今までは損金とすることができました。しかし、本年4月1日以降の取得分から年間300万円を限度とすることになりました。しかし、この規定は中小企業にとっては有利な規定ですので活用したいところです。

賃借建物の内装費用
よく、賃借建物の内装費用にその建物自体の耐用年数を適用していることが見受けられます。しかし、内装費用であれば合理的に見積もった耐用年数を適用することになっています。しかし、合理的に見積もること自体難しい面がありますが、一般的には18年弱になるそうです。

留保金課税
同族会社に対しては、一定の留保金に対しては法人税が加算されることとなっています。しかし、平成18年4月1日以降開始する事業年度からは、今まで自己資本比率50%以下に適用されていた基準の適用がなくなりました。ただ、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」の経営革新計画の承認を受けた青色申告企業に対しては適用除外となりますので、積極的に適用申請するのも対策の一つです。

不動産譲渡等の際の固定資産税負担金
不動産を譲渡したり購入する際は、固定資産税相当額を引き渡し日を基準として負担割合を算出し売り主、買い主がそれぞれの期間対応分を負担するのが一般的です。会社が売り手側の場合、固定資産税相当額は収入に計上或いは租税公課を減少させて問題ありませんが、買い手側の場合は、不動産の取得費に含めることになります。なお、その個人が売り手側であるときは、譲渡収入に含めなければなりません。

意外に多い適用期限の規定
バブルの時期の(現在は停止している)地価税など、特に租税特別措置法には適用期限もあります。例えば、土地の譲渡等がある場合の時別税率の加算も、平成20年12月31日迄適用が停止されているに過ぎません。その適用期限もその時期になって延長される場合もありますが、土地等の売却をお考えの方はそのことも念頭に置く必要があります。また、贈与税の基礎控除額年110万円も相続税法上(贈与税であっても相続税法で規定されている)はいまだに60万円となっており、平成13年より経過措置として年110万円になっているに過ぎないのです。


12.顧客との関係づくりで、コストは削減できる

 カタログ・チラシがなければ、お客さまに伝わらないのでしょうか。広告しなければ、集客できないでしょうか。コスト削減は「これは絶対に必要だ」と思っている費用を思い切って削ることです。

宣伝費は、ムダ金と知れ
莫大な宣伝費をかけても、すぐに元が取れるという大企業でもない限り、宣伝費という経費を廃止することをお奨めします。
宣伝して、購買に結びつくのは、0.1%も無いと言われています。そんな小さな反応のために、大きな予算を使うのは、「ムダ」以外の何ものでもありません。

3つの方法で、顧客との関係づくりを
メデイアやDM等の宣伝費は、あなたの会社の営業マンと顧客との接点を増やす費用に充てたほうが効果があります。それは、接待などではなく、営業マンのサポート費です。ここでは、モノを売る側と顧客とのつながりを深める方法として、次の『3つの方法』を提案します。

営業マン ←@顧客へのコンサルティング→ 顧客
←A顧客へのニューズレター→

←B顧客参加型経営→


@顧客へのコンサルティング
コンサルティングセールスが決め手だ、と、盛んに言われた時期がありましたが、実際は、商品・サービスの「売り込み」の域を出ませんでした。『売らない勇気』は、なかなか持てないものですが、顧客にとって、本当に必要なモノを探し出してあげることが大切なのです。

A顧客へのニューズレター 
「人」を知ることから、深いつき合いが始まります。しかし、頻繁に顧客訪問できない場合は、ニューズレターの活用が効果的です。内容は商品・サービスとはまったく関係の無い、営業マンの趣味や日常のことなどを書いた、ミニコミ誌のようなものでよいです。人間性を知ってもらい、親近感をもってもらうことが商売のベースとなります。

B顧客参加型の経営
新しい商品・サービスは、顧客に試していただく。意見を聞き、批評していただく。これは、単に商品開発に役立てるためではなく、顧客に『参画意識』を持っていただくことで、一緒に会社を育ててもらおうというものです。
商品・サービスを買う側と売る側、という関係では、密な人間関係にはつながりません。時には、ともに商品を開発し、ともに売っていただく。これによって、お互いの距離が縮まり、顧客はファンとして残り、企業としても。繁盛し続けることができるのです。

  商品を売り込むための宣伝費など、不要です。売り込むべきは、営業マンです。それができれば、ファンとなっていただけます。また、口コミで広がり、少しずつ新しい顧客が増えていきます。それが、企業として永続することにつながるのです。


13.攻めのコストダウン

「コストダウン」と「支出を抑える」とは同意語ではなく、時には「支出を増やして」も「コストダウン」を実現する場合があります。長期的には売上に対するコストが下がるのですが、「攻めのコストダウン」の意識が重要です。キーワードは「資金量の削減」です。

資金量の削減
「コスト」と聞いた時「P/L(損益計算書)」の問題と捉える向きがありますが、実際に効果が大きいのは「B/S(貸借対照表)」の資金量全体の削減を目指すことであるのです。
製造業におけるトヨタの「ジャパンインタイム」「カンバン方式」などはその成功した代表例です。

 現在「屋台」と言われる流れ生産方式を廃止した生産方式の作業時間短縮が注目されていますが、これは作業時間短縮のメリット以外に中間在庫と作業面積の劇的減少をもたらします。土地や建物設備、管理要員などの削減、同じ生産規模であれば資金量の減少をもたらします。

 その結果、有利子負担は減少し、お客様からの注文に対する即応体制を作られ、売上増加につながり、さらには工程数の減少が品質管理の精度をあげる基礎を生み出します。

売る造る技術開発 ジャストインタイム 資金量削減  −コスト削減→ 売上増加
−提案型販売→
−品質向上→

流通業における「売る」技術  
 流通業の常識では「店頭在庫が多いほうが、売上が伸びる」とあります。しかし流通業でコストダウンを実施するにあたり注意を要するのは、人件費の削減です。店舗の場合、人員削減は店員の士気に影響し、接客にも悪い影響が出て、最終的に売上がジリ貧となり閉店に追い込まれる事例を多く見てきました。
 そこで流通業においては、店頭での「売る技術」の開発を優先し、その結果として「店頭在庫」を含めた商品在庫の激滅を目指してください。

潜在市場の購買意欲を開発し、店頭側が売りたい商品を売りたいときに
売る技術→提案型販売(モチベーティブセール)

お客様の来店動機 お客様の来店動機が市場 店が用意した来店動機


レベル

来店レベルを超えている

・提案しても来店しない来店しても失望させる店側がレベルアップすべし
・的確に知らせれば来店する固定客を目指す
・ライフスタイルに提案
・提案次第で来店する動機レベルアップを狙う

来店するレベル
来店しないレベル


14.物作りの削減ポイント

 物作りをさせたら世界一と言われる日本ですが、そのマネージメントはどうでしょうか?
 長いデフレを耐えてきた各企業の皆さんは、コスト削減に対する意識は高く日々努力されていると思います。しかし、私の知る金属加工業や食品業、建設業など様ざまな物作り現場では、まだまだ『ムダと言う利益の素』が散在する現実を目の当たりにします。物作り現場に訪問し、コストに対する質問を現場責任者にすると「うちは、コスト削減にはどこにも負けない努力をしています。」と答える方が多いのですが、そういう現場ほど改善点は多いものです。

 ここで、今一度『価格の構成式』を思い出して下さい。
好景気の時は利益を十分に確保できた構成式〔原価+利益=価格〕でしたが、同じ構成式が〔価格−原価=利益〕という式に変わって、厳しい価格の中から原価を引いて利益を捻出するという厳しい状況であることを再認識して頂きたいと思います。

 ようやく不況から脱却し、好景気の兆しが見えてきたと言われる現在でも安易に利益を上乗せして価格を上げられないのが現実で、格差の拡大した日本の社会では、一般庶民向けの価格競争は沈下すること無く続くと予測されます。
この意識の定着は、皆さんの企業にとって、今後の営業戦略を立てる際の重要なポイントとなるでしょう。

 それでは、利益を捻出するためのコスト削減について考えていきましょう。一般的にコスト削減には、以下の大きく分けて3つの方法があと言われています。
1. ロウコストで作れる新鋭設備投資
2. 安価な資機材の購入
3. 生産性向上によるムダ取り

  これらの3つのうち2番目の方法が最も簡単でどの企業も行われていることですが、これも今や限界に来ていることでしょう。
また、1番目の多額な設備投資も将来を見越した上でそうそう簡単に決断できることではありません。
すると残るは3つ目の『生産向上によるムダ取り』ですが、これは、いわゆる知恵と工夫による自助努力の部分で最も継続性の高い可能性に富んだ領域と言えるでしょう。

 しかし、人の労働力を必要とする物作り現場では、労働生産性は様々な要素で変動し、ムダが発生してしまいます。このムダ取りをする重要なポイントは、3現主義(現場、現物、現象)で正確に事実を把握することです。

生産向上のために
(改善の基本精神+箇条) 労働密度の向上の図解

1.現状方法の固定観念を捨てよ。
1.出来ない理由よりもやる方法を考えよ
1.言い訳をするな、まず現状を否定せよ。
1.パーフェクトを求めるな50点でよいすぐやれ。
1.誤りはすぐ直せ。
1.改善に金をかけるな。
1.困らなければ「知恵」がでない。
1.「なぜ、なぜ・・・」5回真因を追求せよ。
1. 一人の「知識」より十人の「知恵」を。
1. 改善は無限である。


15.標準化による大幅コスト削減

 原価に占める材料費など購入費の比率は業種による違いはあるものの、一般的に65%程度です。人件費が20〜25%であることから考えるとウエイトの大きさが理解できます。この購入費を如何に削減するかが、企業の競争力に大きく影響します。
 以下は製造業における事例ですが、その他の業種においても十分ご参考になる内容だと思います。

 製造業における購入品は、商品の多様化や、部品材料の市場が多様化していること、さらに設計者の選定基準の違いや階層化組織の問題などを背景に年々増加傾向にあります。

 当然、部品や材料が増えれば、コストが上がる、在庫が増える、品質が悪くなる、設計効率や生産性が悪くなるなどの問題が生じます。これらの問題は現象面に対する対症療法では理解できません。根底から解決する唯一の対策が、部品、材料の標準化です。

 新規設計から使用する部品を必要な種類だけ限定すれば、部品は1/10〜1/30程度に集約できます。結果、類似の部品が50%以上安い価格で購入でき、同じ機能で同じ形状の部品が30%は安くなります。誰もこれほど下がるとは思わなかったと言われます。あまりコストに力を入れてこなかった企業では、60〜70%も下がることがあります。

 これ程の大きなコスト効果のある標準化ですが、適切な標準化の取り組みができている企業はほとんどありません。コストを削減する努力をせずに海外に出て行く企業が多いのです。

 標準化の取り組みが進んでいない理由には、技術的な面と経営的な面の両方があります。部品や材料を標準化するには、社内全体の商品に最も適した種類をどの様に選定するのか技術面のリーダーシップが必要です。いくつかの部品に分かれている場合、これが意外と大変なのです。

 標準化は、すべての商品に関わるモノ作り全体の取り組みです。標準品が使用される仕組みを作り、モノ作り全体を標準化で推進する経営方針が必要です。

 標準化はモノ作りの基本であり、モノ作りの定石です。スポーツや稽古事で基本が大事なのと同じでモノ作りにおいても基本が重要です。多様化が進み、差別化が要求されると、基本ができていないと対応できなくなります。

 標準化に取り組むと、購入コストが低減すると述べましたが、購入コストを低減することだけが標準化の目的ではありません。標準化に取り組むことで、いろんな面の無駄がなくなり、モノ作り全体が最適化します。設計が効率化し、生産設計に追われる状況に余裕が生まれます。各部門のベクトルが部品や設計の標準化を通し、同じ方向で一致します。モノ作りが革新されるのです。

 日本は、モノ作りで発展していくことが将来の方向性です。現状の高い技術力に、標準化による取り組みをプラスすることで、競争力をさらにアップすることが可能です。高収益体質を構築し、企業の発展を持続させる手法が標準化なのです。


16.改善提案制度でコスト削減

 中小企業でも、製造業を中心に改善提案制度が社内にあるところは多いようです。しかし、大半は形骸化しており、誰も提出していないのが現実です。しかし、仕事は毎日の積み重ねですし、知恵を出す社員を育てるためにも、改善提案制度をもう一度見直しましょう。

毎日の繰り返しは大きい
ある製造業の会社では、製品1個あたりにスプーン5杯の薬剤を入れていました。それが社員の提案で、おたまで、すりきり1杯が同じ量であることがわかったそうです。また、製品をパレットに積み重ねていき、30段たまったところで運んでいたのですが、社員の提案で、ちょうど30段のところへ上から紐を吊り下げたことにより、いちいち数えなくてよくなったという事もありました。

たった数秒の違いでも、同じ生産量なら作業工程の効果率化によって、長い目で見れば莫大な人件費の圧縮が図れます。

「俺の会社」と思う人が増える
改善提案制度は、単に経費削減の問題だけではありません。
通常の中小同族企業では、社員が会社のことをどう思っているかというと、「どうせ社長一族の会社でしょう。儲かろうが儲かるまいが関係ないね」と思っているものです。
しかし、自分の改善提案が採用されると、自分の考えた改善箇所は残ります。それを見るたびに「俺の会社だ」と感じられるようになり、ムダ使いをしなくなったり、顧客への対応も変わってくるものです。
経営者と社員の価値観の共有に有効です。

勤務時間外に会社のことを考える
アイディアは、いつでもどこでも考えることが出来ます。風呂に入っているときも、寝ようとするときなど、ピンとひらめくことは多いものです。つまり社長以外の人が、勤務時間外に会社のことを考えてくれるというのは、企業競争の厳しい時代にとても頼もしいことです。

改善提案制度活性化の秘訣
まず、採用するしないにかかわらず、500円くらいを報奨金として出してしまうことです。せっかく考えて提案したのに没になってしまうと、次に出そうとする意思が弱くなってしまうようです。

 なかには全然使えない提案もあるでしょう。でも、一ついい提案があれば簡単に元は取れます。 また、提案者と改善者を分けることも重要です。

 提案しても「じゃあ君がやっておけ」では面倒くさくなってしまいますし、中小企業では社員ひとりで改善しても、上司や同僚の指示が得られない場合もあるからです。
改善の実施は、社長が管理者を具体的に指名し、会社としてきちんと実行すべきです。
もちろん採用した場合は、参加報奨金の500円とは別に、改善提案の効果や貢献度に応じて報奨金を支給するのはいうまでもありません。

   日本は大変人件費の高い国になりました。正社員がルーチンワークやっているだけで儲かる仕事は、そんなに多くはないのではないでしょうか。「正社員は会社の売上利益に貢献するひと」にするためにも、「会社全体の生産性向上」のためにも、改善提案制度を稼動させて、会社と社員を活性化してみてください。


17.原価管理とスループット

  原価計算は工場の稼働状況や賦課の条件によって変わるものです。その結果、通常の設定原価を頼りに販売活動をすることは結果として全体利益と結びついてこなくなります。原価を基準にしながら、「売り」を優先すると、結果的に大幅な値引きをせざるをえなくなり、見かけ上、採算無視の販売活動の繰り返しとなってしまいます。
 重要なのは結果として得られるキャッシュフローであり、これだけが会社の財務状況を改善し、企業価値を高めることにつながります。

原価計算の落とし穴
◇原価計算による販売活動はキャッシュフローにつながらない
◇労務費や経費は製品に割り振る(賦課する)ことができない

企業の目的はもちろん利益を上げることです。

スループットによる販売活動
「スループット=売上高−直接材料費」を活動の基準とし、これを最大化をすることによって得られた結果はそのままキャッシュフローにつながります。
ただし、このスループットを適用する際には、工事が手余り状態なのか、それとも手不足状態なのかを明確に把握しておくことが必要です。この二つの状況によって、取るべき方策が全く変わってくるからです。

手余り状態でスループット
販売が停滞して工場の稼働率が低下し、設備が遊んでいる状態です。このときは「固定費ゼロ」の視点に立ち戻ります。短期的に見ると固定費は変化しませんので、材料費の回収さえできれば損失の額は変わりません。この固定費ゼロとしての活動は長期的に使える方法ではありませんが、現状を打破し、競合と差別化をはかるためにも試みてみるべき方法です。

手不足状態のスループット
手不足とは社内容量が不足してスループットを獲得できる機会を逃している状態です。この状態では、スループット拡大を阻害している社内のネック工程を見つけ出し、そこを最大活用する方法で切り抜けます。
いつまで続くかわからない需要に対して、設備投資を行うことは大きなリスクを抱え込むことになります。設備投資や体制変更は、経費、変動費の変化とスループットの変化とを比較して評価することが重要です。スループット拡大につながる活動を、経費削減や原価低滅の名目で抑えることは得策ではありません。

販売活動とスループット
従来の計算によると設定原価とスループットの両方を意識して、その両方を使い分けることで、市場競争力に結びつけることができます。
しかし、価格維持ができている他の顧客にまで安い価格が波及してしまうスループットの適用は極力避けなければなりません。
営業は営業としての社内評価を高めるように努力します。しかしながら、原価割れといわれる評価を受け入れるよりも、価格競争力がないことを理由に売上低迷を作り出します。こうした状態では、営業の評価基準を、「原価と基準とした利益率」ではなく、むしろ、スループットそのものに重点を置き、その達成金額を評価基準とするべきでしょう。

  原価とスループットの二つを使い分けの判断ができる営業への権限委譲もまた、原価戦略のひとつです。



 

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