1.知恵を出し合ってコストダウン達成を!
今日は、再びコストダウンについて話しましょう。朝からシビアすぎる話題かもしれませんが、この問題を抜きにして当社の存在はないことを、心に刻み込んでいただきたいと思います。
ご存じの通り、あのバブルの崩壊以後、日本は低成長の時代に入りました。いや低成長などというなま易しい状態ではないことは、ここ十数年間かの不景気を見ればおわかりになるでしょう。材料費は上がる一方、人件費も上がる一方・・・・・。そんな中で利益を見出すのはコストダウン以外にはありません。当社のみならず、どの会社も「コストダウンは社命を制す」とばかりに必死なわけです。
まず、コスト、つまり原価ということを、私たちの生産現場で考えてみますと、第一に原材料費や、あなた方の給料などの直接費用があります。第二に附帯費用として機械類や、それに伴うオイル、電気、水道代などがあり、設備額の減価償却費が加わるわけです。それらを合計したものが、いわゆる工場原価です。このうち、直接費用は削れません。アメリカでは簡単にレイオフ(首切り)をするので、人件費もコストダウンの一項目−つまり削除対象に入っていますが、日本でもそういった傾向が日常的になっています。
しかし、当社では一致団結して知恵を集結し、コストダウン項目を見つけ出そうではありませんか。
2.会社は金のなる木ではない
会社では、自分一人が働かなくても給料がもらえる、という考え方をする人がいるものです。確かに、そういう理屈も成り立ちます。しかし、それを勘違いして、自分一人くらい働かなくても会社はどうにかなる・・・と、外出先でサボっていたら会社自体がダメになっていきます。
会社は金のなる木ではありません。社員一人一人が働き、仕事をして利益をあげ、それで社員に給料がでて、家族や関係する人々が生活をしているのです。
職場で仕事をすれば何にでもコストがかかります。コストをいかに少なく抑えていくか、社員一人一人が意識しなくてはなりません。これが“コスト意識”です。原価を低くし、ムダな経費をかけず、その分利益にまわす意識で、材料、資材、経費を判断していくように心がけましょう。コストを低くし、しかも生産性をあげるということは、理屈の上からは相反した考え方と見られるでしょう。金をかけないでもいいものができるわけがない、というのがだいたいそう考える人の理屈です。でも、金をかけるだけがいいものをつくる方策ではありません。言うは易いことですが、実行することは難しいものです。
そこで、自分が担当する一つ一つを細かく見てチェックし、ムリ、ムダ、ムラのないように能率的な仕事を進めていく考え方が大切なのです。
3.小さなロスが大きなコストアップにつながる!
皆さん、コストダウンの重要性はよくおわかりになっていると思います。ただ、コストダウンの難しさは、それぞれの多様なロスが、なかなか形−つまり価値として見えない点にあるといっていいでしょう。道路にお金が落ちていれば、たとえ5円でも人は拾うものです。ところが、5円分のクギが落ちていても知らん顔です。ましてや、常日ごろ使い放しの水や電気、さらには時間となると、その価値をどれほど認識していることでしょうか?
コストダウンにあたっては、目に見えないロスを、いかにはっきり金額として感じられるかが最大のポイントになると思うのです。やれやれ、いやにみみっちい話になるなあ、と思われることでしょうが、まさにコストダウンとは、大いなる“ケチの勧め”にほかなりません。よく、金持ちはケチなやつはない、などと貧乏人である私たちは悔しまぎれに申しますが、それも見方を変えれば、ほんのささいなものにまで価値を感じているがゆえにケチになるのであり、そのような感覚があればこそ、金持ちになれたわけでしょう。
“塵も積もれば山となると”と申します。全員が、見えにくいロスという塵を見つけ、拾い出し、大きなコストダウンという山にしなければならないのです。これからは企業の内部から利益を捻出しなければならない時代ともいえるでしょう。小さなロスの発見こそ、内部から利益を捻出するということなのです。
4.コスト意識を忘れるな、小さなコストで大きな効果だ!
生産部門のみなさんは、原料の使い方に無駄はないか、機械は効率的に稼働しているか、出さなくていい不良品を出していないかと問題意識を持って作業に取り組んでください。
営業部門の人たちは、訪問活動に無駄はないか、訪問先で世間話に花を咲かせていないか、値下げに安易に応じていないか、といったことをあらためて振り返ってみてください。
また事務のみなさんは、仕事の進め方から事務用品の使い方にいたるまで、無駄がないかどうかをチェックしてください。
あらためて「コスト意識を持て」と言うのは、何もケチケチ作戦を始めようというのではありません。生産に必要な原料は良いものを購入してください。事務用品も必要なら買ってください。タクシーを使う必要があるなら使ってもらってかまいません。
ただ、どういう経費を使うにせよ、いつも意識してもらいたいことは、使った経費に十分見合うだけの利益につながるかどうか、という点です。
みなさんは、それぞれ担当がする仕事のプロです。ちょっと考えれば、今まで気がつかなかった無駄に気づくはずです。仕事の効率を上げる工夫・知恵が出てくるはずです。また、そうでなければプロとはいえません。
一つ一つの事柄は小さなことかもしれませんが、それが10,20と積み重なっていけば、大変な効率アップ、すなわちコストダウンにつながります。
5.よかれと思ったことも、いろいろな角度から考える習慣を!
今朝は、原価管理についてお話しますが、「原価管理というものが、いかにしなやかな感覚を必要とする仕事であるか」ということを、しっかり頭に置きながら聞いてください。
埼玉県の所沢市でタヌキが車にはねられ、川の中州に落ちて動けなくなりました。(1994年10月のこと)
これを知った地元の市会議員が、消防署にタヌキの救助を依頼しました。消防署員10人と獣医が現場に駆けつけ、無事にタヌキは救出されました。シッポの骨折と全身打撲でかなりまいっていたため、獣医が抗生物質を注射して、近くの雑林へ放してやったそうです。
タヌキは「他抜き」に通じるので、選挙を前にして「これは縁起がいい」と市会議員は喜んだそうですが、さっそく反対派から疑問の声が上がったそうです。「タヌキ一匹のために大切な税金を無駄づかいして、けしからん」。「動物愛護、自然保護の面からは大変いいこと」と市会議員の肩を持つ人もいますが、さて、このタヌキの救出作戦、その原価が、議員にとって高いものだったか安いものだったか、「選挙の結果が楽しみ」と地元市民は冷やかし半分で眺めていたそうですが、私たちには笑いごとではありません。
原価という者を考える場合、「ただやみくもに安く抑えればいいというものではなく」その結果がいろいろなところにもたらす影響というものも、前もって考える必要があるということを、タヌキの例は教えてくれます。
6.細かいところにいかに気を配るか
私たちの仕事で大切なことは、隠れた無駄、経費の浪費というものをいかに見つけて、それを追求していくかです。いままでにない厳しい状況にある証券業界では、100円単位の節約に真剣に取り組み、何とか生き残りをかけています。どこの企業でも、苦しいときには、どんなことをやっても、生きてい
かなければならないのです。
会社あっての、我々の生活です。仕事あっての人生です。そう考えたら、「これ以上は無理だ」などということをいっているときではないはずです。例えば、包装ひとつにしても、ドイツでは、日本のような過剰な包装は認められません。そかし、私たちは、これが当たり前と考えてやっています。それは確かに、取引先との約束事や先方の要望もあるのでしょう。しかし、無駄なことは、やめるように、こちらから提案していくことが肝心です。とくに、大手の下請け会社では単価の引き下げ圧力が相当なものです。しかし、その一方で、原価に関する工夫というものはなおざりにされている部分があるのではないでしょうか。
競争力を保つために、必要なことはどんどん提案しながら、全体として生き残っていくやり方をみんなで考えていくことが、これからはますます要求されるのではないかと思われます。
「物は試し」ということが言われますが、何でもやってみることが大切なのではないかと考えます。そうすることで思いも寄らないことができてしまう、ということもあり得ます。
良いと考えることはやってみる、提案してみる、この精神が大切です。それなくして、「もうだめだ」「これ以上は無理だ」というのでは何にもならないことになってしまいます。
7.経費節減活用シート
・みんなで経費を節減しよう!(pdf)
・費用発生起因からみる経費削減着眼シート(pdf)