この会社は、自動車のバックミラー等の塗装を行っている会社です。同社の一番の悩みは慢性的な赤字に苦しんでいることでした。赤字の原因を突き止めるため、業務の分析を実施しました。すると、加工製品の不良品率が高いために、二重、三重の一般経費及び人件費を抱えていることが解明できました。更に、不良品発生の原因が工程の最初の段階のゴミの除去を担当する2名の従業員にあることが判明しました。(他の従業員に同じ作業をさせたところ、不良品率が4分の1になりました。) これにより、同社としてはこの2名の従業員を解雇いたしました。当初は配置転換を考えましたが、この2名のスキルレベルを考慮すると、技術不足で配置転換先がありませんでした。 納得いかない2名は不当解雇ではないかと裁判所に申立を行いました。しかし、「従業員の作業に対する適格性が欠け、整理解雇の条件を満たす」ということで、解雇権の濫用にはならないとの判断がなされました。 (弥生工芸地位保全等命令申立事件 大阪地裁:平成13年 ヨ10092)
(ポイント) 作業に対する従業員の適性をよく考えましょう。もし、適性に合わない配置であれば合致する配置を考えましょう。それでも配置転換される職場がない場合は解雇という手段は正当と考えられます。このステップを必ず守りましょう。 ◎ 会社は、就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける等の方法により、労働者に周知しなければいけません。
一般社員のAさんが、住居侵入罪として罰金2,500円に処されたことを理由に懲戒解雇となりました。しかし、「この処分は重すぎる」として、Aさんは会社を相手取って裁判を起こし「解雇は無効だ!」と訴えました。 この判例のポイントは、会社は、Aさんが従業員賞罰規則にある「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した者」に該当するとして、Aさんを懲戒解雇にしたことです。 しかし、賞罰規則の規定の趣旨と照らして考えると、Aさんの行為は、「私生活の行われたもの」Aさんの刑罰が「罰金2,500円程度であったこと」「会社におけるAさんの職務上の地位も工員で指導する立場でないこと」等、事情を勘案すれば、Aさんの行為が、会社の体面を著しく汚したとまで評価するのは、当たらないと考えられました。よって、解雇は無効であるとして、雇用関係の存在確認を求めた判例となりました。 (横浜ゴム事件 最高裁第3小:昭和44年 オ204) (ポイント) 社員が犯罪を犯した!「すぐクビだ!」と早合点はいけません!!仮に間違いがあっても、社員を守る姿勢が大切かもしれません!
この事件は、会社の女性管理職Bさんが、管理職として部下に対する態度が感情的で一貫性がないという点が問題でした。それが原因で複数の従業員が退職し、かたは、退職の申し出がありました。同社はこのような状態だと会社にとって悪影響だと考えて調査を行いました。そして、他の従業員からも多くの苦情が寄せられました。営業職員に対し「便宜を図るから。」と言って物品を要求したり、会社の宴会での酒癖が悪く「どうにかして欲しい。」という苦情がありました。同僚が本人のためと思って注意をしても聞き入れませんでした。そして、反発して部下に八つ当たりをするといった状況でした。同社としては、降格、配転によっても解決不可能であるとして解雇を行いました。 これに対して、納得のいかないBさんは「この解雇は無効だ!」といって裁判を起こしました。しかし、裁判所の判断としては、「解雇の理由に客観的、合理的なり理由があるので会社通念上相当として、是認することができるので有効である。」と言う判決が下されました。 (バイオテック解雇無効確認等請求事件 東京地裁:平成13年 ワ24498) (ポイント) 解雇の理由の理由には、客観性と合理性が問われます。また、会社通念状の判断も下されます。 ◎ 会社は、就業規則を常時各作業場の見やすい場所に掲示し、かたは備え付ける等の方法により、労働者に周知しなければいけません。
この事件は、会社が取引の拡大により海外担当チームに即戦力となる人材を中途採用することから始まりました。採用されたCさんは海外勤務歴があり、英語学力の問題はないと判断され採用の運びとなりました。しかし、日本語の読み書きがあまり出来ないことは面接時に話しませんでした。 そして、実際の業務になるとCさんは日本語がまったくダメで、業務知識も問題があることがわかりました。さらに、Cさんは自分のミスを指摘されても話をはぐらかし、謙虚な態度を取ることはありませんでした。また、他の人に対して感情的に批判をすることも見受けられました。そして、業務の進め方や技能を自ら学ぶ姿勢もなく、英語力もひどい誤訳が多くあり、同僚にも多大な迷惑をかけていました。 このような状態なのでCさんの上司は、自主退職を勧めましたがCさんはこれを拒否しました。このため会社から解雇が通告されました。 このことに対し、Cさんは解雇の無効を訴えましたが、裁判所としては、「経歴詐称」もあり、「業務遂行に誠意がなく知識・技能・能力が著しく劣り将来の見込みがない」ことから就業規則に定める解雇事由に該当し、社会通念上解雇は相当との判断を下しました。 (ヒロセ電機解雇無効確認等請求事件 松山地裁:平成12年 ワ120) (ポイント) 「経歴詐称」はいけませんが、Cさんが謙虚に学ぶ姿勢をもっていれば、ここまでにはならなかったでしょう。謙虚さと学ぶ姿勢は必要ですね! ◎ 会社は、就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける等の方法により、労働者に周知しなければいけません。
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