Iさんは、残業後に会社の同僚とともに最寄りの駅に向かっていました。途中に自動販売機があって、「ちょっと一杯!」ということになり、アルコール飲料を買って飲みながら駅に向かいました。それから、電車に乗って、自宅の最寄りの駅に着き、いつもと同じように自転車で家に向かいました。いつも通る土手道を走っていたら、転落してしまい頭を打って気を失ってしまいました。 翌朝に発見され救出されました。Iさんは「この災害は通勤災害である。」として、休業給付、療養給付の支給申請を労働基準監督署に行いました。しかし、監督署は「本件災害は通勤の経路を中断した後で負傷したので通勤災害と認められない。」という判断をしました。 これに納得のいかないIさんは、裁判所に判断してもらおうとして本訴を提起いたしました。その結果はIさんの主張は通りませんでした。その理由は、「Iさんは、通勤の経路上で通勤とは関係ない飲酒行為を行ったもので、これにより往復を中断し、その後に災害に遭ったものである。」と判断されました。 (エムシー・エレクトロニクス労災保険給付不支給処分取消事件 東京地裁 平成12年ウ228) (ポイント) 通勤経路をはずれてしまえば、その後に事故等があっても通勤災害とはみなされません! 「ちょっと一杯!」と思っても、通勤災害になるかならないかの判断は「ちょっと!」というよういはいきません。皆さんも気をつけてください!!
江戸川区職員Jさんは事務所内で喫煙について、上司である係長に相談しました。「私は気管支が弱く、タバコの煙がダメなんです。なんらかの措置をとってもらいたいのですが、どうぞよろしくお願いします。」 Jさんは係長だけでなく、課長にも分煙対策を要望しました。しかし、課長は「本庁舎内において分煙が行われつつあり、庁舎を全面的に禁煙するのは今は無理だよ。」とのことでした。 それからJさんは喉の痛みと頭痛がひどくて医者にかかりました。すると主治医は受動禁煙による急性障害の疑いとの診断を下しました。 Jさんは、この診断の翌日に課長に診断書を提示して、「何とかして欲しい。」と申し出ました。しかし、課長は特段の措置は講じませんでした。その後Jさんは3ヶ月後に別の部署に移動となりましたがこの間は何の配慮もありませんでした。 以上のことから、Jさんは区に対して「受動喫煙で健康を害したものがいるのにそれを放置した」として安全配慮義務ではないかと慰謝料の請求をしました。 裁判所は、区が安全配慮義務を怠っていたものとしてJさんに対して慰謝料の支払を命じました。 (江戸川事件 東京地裁 平成16年7月12日) (ポイント) この裁判のポイントは受動喫煙の損害賠償がはじめて認められた例です。そして、分煙・禁煙の流れを法的に大きく加速させるものだといえます。あなたの職場はいかがですか?「たかがタバコの煙ぐらいで!」とおもっておられる経営者の方は要注意ですよ!分煙・喫煙対策をきちんといたしましょう!
Kさんは、金銭の貸付等を業とする会社に内定が決まりました。そして採用の運びとなり、同社の就業規則に定められている採用時の際の身元保証書を提出するように求められました。しかし、Kさんは全然提出してくれませんでした。同社としても定められている事なので、再三に渡り提出を迫りました。しかし、Kさんは身元保証書の提出について「拒否」の意思表示をしてきました。同社としてはこのような状況では今後雇用を継続できないと判断し、Kさんを同年8月3日に即日解雇いたしました。それに対し、納得のいかないKさんは解雇予告手当などの支払を求め、訴えを起こしました。裁判所の判断はKさんの敗訴という結果になりました。 それは、同社は金銭を取り扱うことが多く、横領等の事故を未然に防ぐために、また、本人に自覚を促す効果も含めて就業規則に身元保証書の提出を条件としてきました。Kさんが身元保証書を提出拒否したということは「従業員としての適格性に重大な懐疑を抱かせる重大な服務規律違反または背信行為である。」として、身元保証書の不提出を理由とした同社のKさん解雇は労基法20条1項但し書にいう「労働者の責に帰すべき事由」に基づく解雇にあたるということです。 (シティズ事件 東京地裁 平成11年12月16日) (ポイント) 身元保証書は、就業規則等で必要の有無を定めることができます。本件のように金融機関であれば身元保証書の重要性は問われますが、一般企業であればこれほど厳しくはありません。
この事件は、会社の専務が、部下の女性の異性関係等について、職場内や外で悪評(個人的な性生活や性向を窺わせる事項について発言を行った)を流していました。部下の女性の人格権を侵害すると訴えて、不法行為が成立するとして慰謝料の支払いが命ぜられた事例です。 使用者は、労働者の人格的尊厳を侵し、その労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防がなければなりません。また、これに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務があります。労働者を監督する地位にある専務がこの義務を怠ったときは、使用者責任が発生するときまりました。会社に対し慰謝料の支払いが命ぜられた事例です。 (福岡セクハラ事件 平成4年4月6日) (ポイント) 会社はセクシャルハラスメントを防止する義務があります。規程等に防止を訴える言葉を入れて、社員にその旨を示す必要があります。会社全体の取り組みとしてはセクハラ防止につとめましょう。
この会社は、警備員の拘束時間15時間のうち休憩時間を5時間と定めていました。ただし、実際の食事時間等で考えるとせいぜい2時間程度が本当の休憩時間と考えられます。 この仕組みを疑問に感じた社員のLさんは、時間外手当の請求を行いました。しかし、会社はそれに応じてくれませんでした。状況が変わらないので、司法に判断してもらおうと、裁判所に申立をしました。 すると、会社は拘束手当1万2千円を支給して、休憩時間に対応する手当という認識でした。また、出動がないかぎり、警備員の待機時間は比較的自由の時間が使えます。よって、労働時間でないと主張しました。 しかし、裁判所の判断は、「拘束手当だけの支払で、賃金は払い済みとは考えられない!この休憩時間の取扱について、会社労働組合との間でこの時間に割増賃金を支払う旨の合意もない!」となりました。よってLさんの時間外手当の請求を認めました。 (関西警備保障事件 平成16年3月31日) (ポイント) まず、休憩時間の定義をきちんとしましょう。それと拘束していることと、仕事の待機の時間との考え方も明確にしましょう。手当と割増賃金の関係をきちんと区別けを行い、上記の件を考えてきちんとしましょう。
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