Q 株式会社の機関設計が柔軟になったそうですが、もう少し具体的に説明してください。 A 今回の会社法改正における柱の一つが、この「株式会社の機関設計」関係の改正です。 少ない紙幅で説明するのは、非常に難しいのですが、すべての株式会社は、株主総会と取締役という2つの機関が必須であるということのほか、以下の原則を守れば、自由に株式会社の機関設計ができるということがポイントです。 原則1 株式譲渡制限会社以外の会社には取締役会の設置が必須。 原則2 取締役会を設置する場合、監査役(監査役会)または三委員会等(注)のいずれかの設置が必須。ただし、大会 社以外の株式譲渡制限会社は、会計参与を設置すれば、足りる。 原則3 監査役(監査役会)と三委員会等の併設は不可。 原則4 取締役会を設置しない場合、監査役・三委員会等の設置は不可。 原則5 会計監査人を設置するには、監査役(監査役会を含む。株式譲渡制限会社ではない大会社は監査役会)または 三委員会等のいずれかの設置が必須。 原則6 会計監査人を設置しない場合、三委員会等の設置は不可。 原則7 大会社には、会計監査人の設置が必須。 この改正の結果、株式譲渡制限会社以外の大会社における機関設計のあり方は現行と変わりませんが、それ以外の会社の機関設計については、選択の幅が大きく広がりました。 (注)三委員会等:現行の商法特例法で導入されている委員会等設置会社における会社機関のこと。指名委員会・報酬委員会・監査委員会と執行役から構成される。
Q 日本の株式会社は、上場会社などを除いて、ほとんどが「株式譲渡制限会社」だと思いますが、この株式譲渡制限会社の機関設計について、説明してください。 A ご質問とおり、日本の会社の多くは株式の譲渡について取締役会の承認を要する「株式譲渡制限会社」です。 この株式譲渡制限会社に絞って、大会社と中小会社別に機関設計をみると、次のようになります。 「株式譲渡制限会社の機関設計パターン」
機関
(注) 1.「大会社」とは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社「中小会社」とは、それ以外の会社を指す。 2.会計参与は、「中小会社D」以外は任意設置である。
Q 取締役会を設置しない株主会社の株主総会の規律が見直されたそうですが、説明してください。 A 新会社法では、株式譲渡制限会社は、取締役会を設置する必要はないこととされていますので、「取締役会を設置しない株主会社」はすべて株式譲渡制限会社ということになります。取締役会を設置しない株主会社の株主総会は、主に次の点で、取締役会を設置する会社と異なるものとなります。 ○「総会は商法または定款に定める次項に限り決議できる」という商法230条ノ10の規定は適用しないこと ○株主総会の招集通知は、会日の1週間前(定款で短縮可能)までに発すれば足りること ○招集通知は、書面または電磁的方法によらないことができること ○招集通知への会議の目的次項の記載(記録)は要しないこと ○各株主は、単独株主権として総会での議題提案権を有すること ○招集通知への計算書類および監査報告書の添付は要しないこと ○議決権の不統一行使について、事前通知を要しないこと 取締役会を設置しない会社は、小規模な会社と想定されます。したがって、小規模な会社の実態に合わせた株主総会の見直しが行われたわけです。
Q 取締役・取締役会関係の改正内容について教えてください。 A 取締役関係の改正では、員数と任期の見直しがあげられます。 まず、取締役会を設置しない会社の取締役の員数は1人で足りるものとされます。 現行では、株式会社における取締役の員数は3人以上ですが、有限会社が廃止となるため、小規模な会社の実態に配慮する観点から、取締役会を設置しない会社については1人以上とされたわけです。 また、最初の取締役・監査役の任期を1年以上とする現行の規定は削除されました。 「取締役の任期の新旧比較」
改正前・改正後 会社の種類等原則
選任後2年以内の最終の決算期に関する定時総会終結の時まで
株式譲渡制限会社
選任後10年以内の最終の決算期に関する定時総会終結の時まで伸長することができる
就任後1年以内の最後の決算期に関する定時総会の終結の時まで
A 補欠監査役・補欠取締役の予選制度とは、辞任等により監査役・取締役の員数が不足する場合にあらかじめ選んでおいた補欠を充当する制度です。 現行の商法には、明文の規定はなく、産業界からの要望が強かったため、今回の改正で予選制度が導入されることとなりました。 つまり、定款の定めがなくても補欠監査役等の予選ができること、予選の効力は選任後最初に到来する定時株主総会の時までとすることなどが明確化されました。
A 「会計参与」は、ご質問のとおり、株式会社の新しい機関です。その仕事は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成することなどです。株式会社の任意で設置することができるので、大会社でも中小会社でも設置は可能ですが、社内に会計専門家がいない小規模会社が主なターゲットとされています。 会計参与は、公認会計士(監査法人)または税理士(税理士法人)しか就任することができません。 公認会計士は、会計監査人との兼務が禁止されますが、税理士は、税務と兼務は禁止されていませんので、同時提供は可能です。ただ、上乗せの報酬を獲得できるか、代表訴訟の対象となるという思い責任にどう対応するかなどの問題もあります。 会計参与制度の概要は会計参与の項をご覧下さい
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