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1.計算関係の改正の概要

Q 会社の計算関係が大分変わるそうですね。計算関係の改正は、会社の配当政策や計算書類の作成などに大きく影響がありますが、どのような改正が行われたのですか。

A 会計処理や計算書類の表示に関する事項は、これまでの商法改正等で、ほとんどが商法施行規則に委任されていますが、今回の改正では、主に、配当に係る部分と「資本の部」に係る部分の見直しが行われました。配当に関する改正では、株主に対する金銭等の分配など「剰余金の分配」として整理し、統一的に財源規制をかけるとともに、株主総会等の決議により、いつでも剰余金の分配ができるようにしています。 また資本の部関係では、株主総会等の決議によりいつでも資本の部の計数の変動を行えることとすること、法定準備金を「準備金」に整理することなど、重要な改正項目が含まれています。


2.配当や中間配当などは「剰余金の分配」で整理

Q 配当規制が大きく変わったそうですが、説明してください。

A 現行の商法において、利益配当を含めた株主に対する金銭等の分配には、利益配当や中間配当などいろいろありますが、株主に分配してもいい金額(財源規制といいます)は、それぞれ別個に決められています。さらに、株主への払戻しと考える自己株式の有償取得についても、定時総会の決議で取得できる場合などに分けて、それぞれ財源規制の規定を置いています。今回の改訂では、これらのケースについて、建設利息を除き(注)「剰余金の分配」としての整理し、統一的に財源規制を行うこととしています。 具体的には、次のとおりになります。

「配当と剰余金の分配」

〈現行は別個に財源規制〉 〈改正後は一本化〉
○利益の配当
○中間配当
○減資に伴う株主への払戻し
○法定準備金の減少に伴う株主への払戻し
○自己株式の有償取得
○建設利息




剰余金の分配

廃止

なお、自己株式の取得のうち、合併、分割及び営業全部の譲受により取得する場合や単元未満株主の買取請求に応じて取得する場合など、一定の場合は、財源規制の対象から外されました。

(注)
営業の全部の開業前に株主に利息を配当することを認めている「建設利息」の規定は、上記のとおり資本・準備金の払戻しが容易になったため、その必要性がなくなり、今回の改正で廃止となりました。


3.いつでも「剰余金の分配」が可能に

Q 配当や中間配当などが「剰余金の分配」にひとまとめにされたとのことですが、現在行っている配当などは、新会社法施行後はどうなったのでしょうか。

A 新会社法の下では、いつでも、株主総会の決議によって、剰余金の分配を決定できることとされます。 したがって、株式会社は、従来どおり、年1回の利益の配当を行うこともできますし、株主総会の決議さえ行えば、年何回でも利益配当を行うことができます。 上場会社では、四半期情報開示制度が導入されていますが、四半期決算に合わせて、四半期配当の実施も可能となります。 また、取締役会設置会社については、現行の中間配当(注)に相当する制度も維持することとされています。 なお、剰余金の分配に係る株主総会決議は、原則として普通決議ですが、@現物配当とA特定の者から自己株式の有償取得は、特別決議とされます。

(注)中間配当:株主総会決議により、中間配当可能額の範囲内で株主に金銭の分配を行う制度。


4.取締役会決議で「剰余金の分配」ができる会社も

Q 剰余金の分配を行うには、必ず株主総会決議が必要になったのですね?

A 株主総会で決議することが原則ですが、以下の要件を満たす会社については、取締役会の決議で、剰余金の分配を行うことができることとされます。
要件1 取締役会設置会社であること(これは、当然ですね)
要件2 会計監査人を設置していること
要件3 取締役の任期をその選任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとすること
要件4 委員会等設置会社以外の会社の場合、監査役会を設置していること
要件5 定款で剰余金の分配(特別決議が必要な事項を除く)取締役会決議で決定することができる旨を定めること
上記の要件から明らかなように、これは主に大企業向けの手当てです。


5.分配できる剰余金はいくら?

Q 株主総会等の決議でいつでも剰余金の分配を行えるとのことですが、では、いくらまで分配できるのですか?

A 剰余金は、「分配可能額」の範囲内で分配できるとされています。 分配可能額は、最終の貸借対照表(B/S)上の留保利益等から@最終B/S上の自己株式の価額等とA当期に分配した金銭等の価額を控除して求めます。 実質的には、分配できる財源の範囲は、現行の分配と変わりません。計算の方法が変わっただけです。 ただ、実質的に大きく変わる点は、最終の決算期後、その分配を行うときまでの分配可能額の増減を反映させるという点です。 例えば、旧商法規定において配当できる限度額(配当可能利益といいます)が1,000万円とします。 その時点での配当可能利益と分配可能額は1,000万円で同じです。 期末後すぐに自己株式を100万円分有償で取得した場合、分配可能額は100万円減って900万円になりますが、旧商法の配当可能利益は、1,000万円のままです。 つまり、旧商法規定ですと、定時株主総会で1,000万円まで配当を行えますが、改正後は900万円までしか行えないことになります。 なお、最低資本金規制が、廃止された代わりに純資産額が300万円未満な場合、剰余金があっても分配できないこととされます。


6.利益の資本組み入れが定時総会以外でも可能に

Q 「資本の部」について、いろいろな改正があったようですが、説明してください。

A 原則として、いつでも、株主総会の決議で、資本の部の計数を変動させることができることとされました。資本の部の「計数」とは、つまり、資本金や準備金など、貸借対照表における資本の部の構成要素のことです。 この結果、定時総会でしか行えなかった利益の資本組入れが、いつでも株主総会の決議で行えるなど、企業実務に与える影響も出てきました。今回の「資本の部の計数」に関する改正のポイントをみると、次のとおりです。 多少難しいので読み飛ばしていただいて結構ですが、「株主総会の決議(注)で資本を動かす」のが原則ということだけは覚えていただきたいと思います。

原則 いつでも、株主総会の決議で資本の部の計数を変動させることができることになった。
上記の原則に関連して下記のような変更が行われた。

○利益の資本組み入れを株主総会決議で行える(現行:利益処分として定時総会の決議が必要)
○準備金の資本組み入れは株主総会の普通決議が必要に(現行では取締役会決議でOK)
○ 株主総会の普通決議で利益の準備金計上が認められる(現行:不可)
○ 資本金減少の場合、資本金の準備金計上が認められる(なお、減資は特別決議が必要だが、減少後に分配可能な  剰余金が生じない場合は、普通決議で足りることとされる) また、現行では資本準備金と利益準備金が法定準備金  としてそれぞれ別に規定されていますが、新会社法上は、単に「準備金」として整理されます。 なお、現行の利益準  備金の積立てに関しては、基本的には現行と変わりません。 つまり、@分配した剰余金の10%相当額、またはA資  本金の4分の1から準備金を控除した額のいずれか少ない額を積み立てることとされました。

(注)「余剰金の分配」と同様に、取締役会の決議で行える会社もありますが、ここでの説明は省略します。


7.新しい計算書類が登場

Q 会社の計算関係で、そのほかの改正項目を説明してください。

A 次のような改正が行われました。
@新たな計算書類として「株主持分変動計算書」の導入
A利益処分案・損失処理案の廃止(会社法上は規定しない)
Bいわゆる「役員賞与」その他の取締役等に与える財産上の利益について、株主総会決議事項化
Cすべての株式会社に決算公告の義務付け継続
D定時総会開催時期規制(監査役等に貸借対照表を提出してから一定期間を経過しなければ定時総会を開催できない)の廃止
 このうちBは、いわゆる「役員賞与」を費用処理しようが利益処分で行おうが、会計処理に関係なく、総会決議が必要になるということです。 また、Cでは、新会社法の下で設立が認められる“有限会社”的な株式会社にも決算公告を強制する一方(注)でEDINET(電子開示システム)による有価証券報告書提出会社には、決算公告が免除されます。

(注)旧商法の有限会社には、決算公告は義務付けられていません。新会社法の下では有限会社は廃止になり、代わりに、取締役会・監査役不要という“有限会社”的な株式会社の設立ができます。このような会社にも決算公告は義務付けられることになるわけです。




 

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