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1.税務調査には強制力があるのか

 税務調査の種類には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」があります。
 任意調査のうちで、事前連絡のない抜き打ち調査を「現況調査」といいます。主に飲食店等、現金商売をする会社に多いのですが、必ずしも強制的というわけではありません。会社の都合で相当の理由があれば、調査を待ってもらうことができるものです。
 現況調査のこられた場合、まっ先に皆さんにしてほしいことは、会計事務所への連絡です。そして必ず立ち会いをしてもらってください。それまでは絶対に調査をさせない、あくまでも調査を待ってもらうというのが鉄則です。
鉄則としてもう1つ忘れてはならないのが、調査官の身分を確認することです。消火器セールスをするニセ消防署員ならぬニセ調査官にだまされるケースがあるからです。それを防ぐためにも、調査官の身分をしっかりと確認し、会計事務所にも、「○○税務署××さんが来ている」という報告を必ずしてください。
 調査を堂々と断ることができるのは、社長等の代表者が不在で連絡がとれない場合に限ります。基本的にこれ以外は断れません。
 会社の帳簿は、原則的に代表者の許可がなければ外部の人間に見せることはできません。調査官に対してもまたしかりです。ですから、代表者がいなければ自ずと調査が成立しないというわけです。
 現況調査では、とりあえず金庫を開けて見せてほしいといわれます。現金や伝票、机の上のものなど、その場で押さえられるものだけを調査し、その翌日か翌々日の改めて通常の調査を行うというのが一般的だからです。
 このように、強制力がなく、会社側がそれを拒否すれば調査の続行が不可能になるものを「任意調査」といい、一般的に「調査」と呼ばれています。これに対して、絶対に拒否することができないのが強制調査(査察=マルサ)です。令状を出されたら、万事休す。「今日はちょっと用事があるので」といって逃げるわけにはいきません。
 査察は突然会社に来ます。そしてその場で、脱税等の証拠となる現物を差押えます。と同時に銀行、経理担当者の自宅や社長の自宅、工事等関係があるところも一斉に調査を行います。こうなると、もう観念するしかありません。
 査察は悪質で計画的な脱税犯に対する国税犯則取締法に基づくもので、通告処分または告発が最終目的です。ですから、査察が行われれば、新聞等を通して国民に公表されます。


2.調査はいつ行われるか

(1)調査の手順
 税務調査が行われるサイクルは、通常3年から5年(最近は6年から7年)に1度が基本です。一般的な会社は循環接触対象法人といわれ、これに該当しますが、過去の会社の税暦(税務上の履歴)や業種によって調査回数が異なる場合があります。 
 たとえば過去の税暦が優秀で納税意思もしっかりしていると認められた優良申告法人は、調査による指導がさほど必要でないとみなされ、5年に1回しか調査が行われません。
 また、不動産賃貸業を営む会社などは、たいてい10年間調査がまったく行われません。このような会社を周期対象除外法人といいます。これは売上や経費等が毎年ほぼ一定しているので、調査に行かなくても書類上で事足りるので、たとえば売上や経費が大幅に増減した時だけ調査を行えばいい、という理由からです。
 これとは逆に、継続管理対象法人といって、特に悪質な会社、脱税等の不正があったり、前回の調査の内容が著しく悪かったりした会社には毎年でも調査を行います。
 つまり税務署側としては、不審があると認められ、調査の成果が上がりそうな会社には頻繁に調査を行い、それ以外は定期的な調査に留めるというスタイルをとっているわけです。

(2)税務調査の年間スケジュール

 次頁の図を見てください。年間を通じての税務調査の動きをまとめていました。
 税務署内の人事異動は7月に行われます。ですから、それからしばらくは事務の引継ぎ等で、税務署員はおおあらわな状態です。
 それがやっと落ち着いて、調査法人の選定をほぼ終える8月半ばくらいまでは、あまり目立った動きはありません。
 ところがそれ以降、一斉に税務調査がはじまり、ピークの時期を迎えます。秋には税務調査の最も多い季節といえます。
 さらに税務調査が盛んに行われるのが12月と3月と6月です。確定申告の時期にも税務調査があるというわけです。こういう締めの時期の直前は、「まあこの金額でいいでしょう」という折衝によいタイミングとなります。おなじように、6月も税務署員の移動の時期が近づきますから、是認を勝ち取る可能性が高い時期といえます。

(3)税務調査の年間スケジュール

 

個人 法人
7/10

人事異動発表
事務引継
調査選定

8/15

税調ピーク

税調ピーク

12/末 個人確定申告
受付
事後確認
 
2/15〜3/16   個人申告応援
3/末 税調期間(追い込み) 税調期間(追い込み)
6/末    



3.どんな会社が調査対象となるのか

 最近では、税務署のKSK(コンピュータ・システム)が進んで、星印の数によって調査法人の選定がなされるようになりまし。
 具体的な選定基準は、次表のとおりです。売上の伸びは順調なのに所得の伸びがいまひとつだとか、支店が増えているのに売上に反映していないとか、申告書ならびに申告書に添付されている資料の数値をコンピュータに入れれば、即座に該当する項目に星印が出て、それが何個以上だと調査の対象にするといった方法がとられているのです。

税務調査対象法人

1.売上が急増している
2. 売上の伸びは連年順調だが、所得の伸びは低調である
3. 支店が増加しているが、売上に反映していない
4. 売上の伸びに比べて、原価の伸びが高い
5. 売上の伸びに比べて、原材料(仕入等)費の伸びが高い
6. 売上の伸びに比べて、外注(傭車)費の伸びが高い
7. 売上の伸びに比べて、人件費の伸びが高い
8. 同規模法人に比べて、個人換算所得率が著しく低い
9. 売上の伸びは連年順調だが、欠損金の繰越がある
10. 代表者報酬が高額であるが、欠損金の繰越がある
11. 代表者からの借入金が、大幅に増加(減少)している
12. 売上高と課税売上高の開差が大きい
13. 課税売上割合が著しく変動している
14. 控除対象仕入税額と推定控除対象仕入税額の開差が大きい
15. 免除見込事業者の多額還付がある
16. みなし仕入率が変動
17. 売上総利益率の変動が大きい
18. 同規模法人に比べて、売上総利益率が著しく低い
19. 同族法人・グループ法人に、過去において大口不正がある
20. 多額の特別損益が発生している(貸倒れ。固定資産の売却など)
21. 建物・土地・備品・車両・船舶が増加している


4.調査はどのように行われるか

 秋は税務調査の多い季節です。調査の際には資料を携行してきて、帳簿との突合せが行われますが、調査の際に活用される資料にはどういう種類のものがあるかをまとめてみました。

● 法定資料
 法人などが翌年1月31日を期限として税務署に提出を義務づけられているもので、正確には法定調書といいます。法定調書の中でも弁護士、税理士、司法書士、外交員などに支払った報酬料金等の支払調書、土地建物売買の不動産等の譲受け対価の支払調書、斡旋手数料の支払調書などが、調査に活用される頻度が高いでしょう。

● 一般収集資料
 税務署が法人などに書面照会で取引資料の提出を求め収集された資料です。売上仕入資料のほか、費用についてもリベート、交際費など支払先の調査に有効と思われる項目を重点的に提出を求められているようです。

● 実地調査資料
 税務調査の際に、調査官が領収書綴りをめくりながら、拾い書きをしているのを見かけます。現金取引や遠隔地取引など相手方の調査の際に有効だと思われる資料を収集しているので、実地調査資料せんが作成されます。

 特別収集資料
 税務署係官が収集先に出向いて収集するもので、代表的なものは、登記資料や贈・改築資料などでしょう。

● 深聞資料
 調査官は深聞資料せん用紙をいつも携行しています。これは自分で見聞きしたことを資料にするためです。駅前で冷凍蟹の販売をしている自動車をみかけた場合は、日時、商店名、プレートナンバー等を登録して、深聞資料が作成されます。そのほか週刊誌切り抜き記事、予約帳、テーブル伝票なども材料になります。


 

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