税務調査の対象を選定する時、申告書が重用視されることはいうまでもありません。売上が急増している、売上の伸びは順調なのに、所得は低調である一何かあるのではないか、というふうに、税務署は申告書や添付してある法人事業概況説明書をもとに、調査する会社を選んでいるのです。 前回の税務調査からそれほどの期間がたっていないのに再度税務調査を受けたような場合、何故税務調査の対象に自社が選ばれたのか検討が必要です。もちろんどうしようもない場合もありますが、税務署は事前に書類調査を行い、調査対象先を選んでいるのですから税務署に提出する書類のあり方を再度検討されたらいかがでしょうか。 そこで、税務署が疑問に思うところは、すべて法人事業概況説明書でわかるようにしておかなければなりません。 また、調査で指摘されても納得ができないものがあれば、嘆願書を出すなど、会社にとって有利になる交渉の仕方もあります。 この章では、申告書に添付する法人事業概況説明書や嘆願書の有効な提出の仕方を説明していくことにします。知っているのと知らないのとでは、こんなに大きな差が出てくるのか、と納得していただけるのではないかと思います。
たとえば、支店が増加しているのに売上に反映していない会社があった場合、税務署は調査に行きたくなるものです。つまり、何も問題がなさそうな会社に行くよりは、調査の成果が上がりそうな会社に行きたがるというわけです。 なるべく調査に来られないようにするには、申告書に取引に関する契約書や領収書などを添付し、法人事業概況説明書の「当期の営業成績の概況」の欄に異議のありそうなことをすべてわかりやすく書いておくといいでしょう。書ききれない場合は、別紙として理由書を添付すればいいのです。別に、申告書に添付したらいけないものが決まっているわけではありません。添付しておいたほうがいいと思われるものはすべて添付しておきましょう。つまり、税務署は書面で確認ができるようになりますから、調査にいく必要がなくなってしまうわけです。 実際、私の顧問先は調査が少ないほうですが、申告書を提出する時には関係書類をほとんど添付しています。ですからイレギュラーな案件や大きな取引があった場合、関係書類や理由書を添付することは、税務調査を受けないための手段として有効かと思われます。
調査で指摘を受けた時、嘆願書を有効に使う方法があります。 まず、嘆願書を書いて調査官に見せるのです。嘆願書は税務署長宛に提出するものですから、調査官によって「困る」といってくる場合と「わかりました。出してください」といってくる場合に分かれます。 当然、調査官は税務署に戻り、上司と「これに嘆願書を出されるのだったら、ことらを指摘するのをやめて嘆願書を出さないように交渉してみよう」とか、「これについての指摘はやめよう」といったふうにいろいろな判断をしますから、ただやみくもに嘆願書を提出するのではなくて、これは指摘されたくないと思うものに提出すると有効です。 嘆願書を出されたくない場合は調査官が交渉してくるでしょうし、交渉してこなかったら提出してしまえばいいのです。つまり、自分のところは不正なことはしていないという意味で嘆願書を出すのです。この他に、上申書を提出して、公の場でお願いする方法もあります。
先に述べましたが、税務調査もちょっと考え方を変えれば、悪いことばかりではないというお話をしましょう。 これまで税務調査の留意点ばかりを強調してきましたが、調査を逆手に取って、今後の会社経営に役立てることもできるのです。 その1つは、調査官の指摘事項を積極的に生かすということ。私の顧問先でこんな例がありました。調査官が取引先の会社に税務調査に行ってわかったのですが、売上と仕入の数字が違っていたのです。従業員が取引先の仕入担当者と共媒して操作したらしいのですが、これは、税務調査が入らなければわからなかったことです。 2つめに、調査官の指摘にも有意義なものがあるということ。たとえば調査の最後に、「まずい処理があれば指摘してください」とか、「税務以外のことで気づいたことがあれば指摘してください」などと調査官に質問してみるのもいいでしょう。調査官は同業他社をたくさん見てきていますから、今後の会社の経理や経営の参考になることを話してくれるかもしれません。 それから、社長さんが会社のために直していきたい箇所をさも調査官に指摘されたかのように、社員に対して指示するということもできます。
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