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 この章では、ややこしい消費税について、調査事例と各項目ごとに調査ポイントとなるものをあげてみました。どれも実際の調査で問題となりやすいものばかりです。


1.課税売上の調査ポイント

●法人が資産をその役員に対して贈与した場合には、贈与物件の時価が課税対象になるにもかかわらず、計上を失念していないか。
● 保証金・権利金等の名目で受け入れたもののうち、返還不要とされている部分の金額を課税の対象からはずしていないか。
● 事業用不動産等の明け渡し遅延に伴う賃貸料相当額として受け取った損害金は課税売上になるにもかかわらず、計上を失念していないか。
● 機械等の販売業者が販売に当たって、課税資金の下取りを行った場合に、販売の対価と下取りの金額を相殺していないか。
● 課税売上(資産の譲渡等)の時期は適性か。
● ジョイントベンチャーを組んだ場合の配当は課税売上に計上すべきところを、課税対象外取引として扱っていないか。
● 法人がゴルフ会員権を譲渡した場合には課税取引となるものを、非課税にしていないか。
●非課税項目・不課税項目

  消費税でも売上計上時期等は、所得税や法人税とほぼ同様ですが、次の表にあげるような非課税項目や不課税項目があるので税抜き処理するときには細心の注意が必要です。特に雑収入や固定資産の売却時が間違いやすいところです。

〔非課税項目〕 〔不課税項目〕
1.土地の譲渡、貸し付け
2.有価証券等の譲渡
3.利子、保証料、保険料等
4.郵便切手類・印紙・証紙・物品切手等の譲渡
5.国等が法令に基づき徴収する手数料等
6.社会保険医療等
7.社会福祉事業等
8.介護保険サービス
9. 助産に係る資産の譲渡等
10.埋葬料および火葬料を対価とする役務の提供
11.一定の身体障害者用物品の譲渡、貸し付け等
12.学校等の授業料等の役務の提供
13.教材用図書の譲渡、住宅の貸し付け

1.受取配当金
2.受取保険金
3.祝金・見舞金



2.課税仕入れの調査ポイント

●事業者が広告宣伝用のテレホンカードを業者に委託して作成した場合に、印刷費用のみ税額控除できるところをテレホンカード代も税額控除の対象としてはいないか。
● 原則課税を採用している事業者が居住用建物の建築費用(居住用として賃貸)係る消費税等を税額控除していないか。
● 同業者団体等の会費(その使途が会の維持費にあてられるもの)を税額控除していないか。
● 翌期免税事業者になるにもかかわらず、期末棚卸高に含まれる消費税額等を税額控除しないないか。
● 課税売上割合95%以上かどうかを正しく計算しているか。
● 交際費等・・・祝金、餞別や香典等現金で支出されているものを課税仕入から除いているか。
● 減価償却資産・・・購入した課税期間において、その減価償却資産に係る消費税の金額が控除されるのを忘れていないか。
● 旅費交通費・・・会社が支払う旅費等は、仕入税額控除の対象となる。ただし、海外出張のために支給する旅費等は対象から外されるので注意が必要です。
● 諸会費・・・会社が同業者団体等へ支払う通常会費は、業務運営上のもであり課税仕入とされないケースが多いが、セミナー等の参加費に相当するような特別会費は対価性があると認められるので、課税仕入に該当します。
● 建設仮勘定・・・消費税では、その目的物の一部の引渡しを受けたときは、その代金を支払っているか否かに関係なく、その引渡しを受けた日の属する課税期間で仕入税額控除をするのが原則です。現実には、建設仮勘定として経理した金額のなかには、単なる中間金の支払もあり、このうちどの部分の引渡しが行われたかを抽出して課税仕入を計算することは困難です。そのため、事業者が建設仮勘定として経理した課税仕入に係る支払い対価の額につき、その目的物の全部の引渡しを受けた日の属する課税期間における課税仕入に係る対価の額とすることが認められています。


3.簡易課税制度の調査ポイント

●2業種以上を営んでいる場合で、特例計算を採用する場合、業種ごとに課税売上が区分されているか。
● 卸売り、小売り等いずれの業種であっても、固定資産を譲渡した場合にはその譲渡対価は第四種事業に必ず該当するにもかかわらず、その業種区分を誤って適用していないか。
● 相殺取引がある場合の課税売上高に注意。
● 製造業者が主要な原材料の支給を受けて製品等に加工する場合。
   主要な原材料の無償支給を受けて、組立・加工を行う事業は第四種事業となります。
  (例)イ.印刷業者が紙の支給を受けて行う印刷
     ロ.製本業者が印刷物の支給を受けて行う印刷
● 建設業者が下請業者として人的役務の提供を行う場合・・・第四種事業。
● 呉服小売業者が呉服の仕立て小売を行う場合・・・第三種事業。


4.届出事項のチェック

 近頃、消費税に係る届出書を巡るミスが増えているようなので、主な届出書について@届出が必要な場合A届出書名(新様式番号)B届出期限を一覧で示しておきます。

消費税の届出等の手続き一覧

区分 @届出が必要な場合 A届出書名 B届出期限
免税事業が課税事業者になることを選択しようとするとき 消費税課税事業者選択届出書
(第1号様式)
選択しようとする課税期間の初日の前日まで
課税業者を選択していた事業者が免税事業者に戻ろうとするとき 消費税課税事業者選択届出書 
不適用届出書(第2号様式)(注1)
選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで
基準期間における課税売上高1,000万円を超えることとなったとき 消費税課税事業者届出書(第3号様式) 事由が生じた場合、速やかに提出
基準期間における課税売上高が1,000万円以下となったとき 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書(第5号様式)
課税事業者が事業者を廃止したとき 事業廃止届出書(第6号様式)
個人の課税事業者が死亡したとき 個人事業者の死亡届出書(第7号様式) 事由が生じた場合、相続人は速やかに提出
課税期間の短縮を選択しようとするとき 消費税課税期間特例選択届出書(第13号様式) 短縮に係わる課税期間の初日の前日まで
課税期間の短縮を適用をやめようとしたとき 消費税課税期間特例選択不適用届出書(第14号様式)(注2) 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで
簡易課税制度を選択しようとするとき
消費税簡易課税制度選択届出書(第24号様式)

適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで

10 簡易課税制度を選択をやめようとするとき 消費税簡易課税制制度選択不適用届出書(第25号様式)(注3) 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで

(注1)課税事業者を選択した場合は、少なくとも2年間は継続して適用を受けなければならない。
(注2)課税期間の短縮を選択した場合、少なくとも2年間は継続して適用を受けなければならない。
(注3)簡易課税制度を選択した場合、少なくとも2年間は継続して適用を受けなければならない。



5.改正消費税法に伴う留時点

 平成16年4月1日以後に開始する課税期間から、免税事業者・簡易課税業者を選択できる特例の対象となる範囲が以下のように変わりました。
@消費税の申告納付が免除されている事業者免税制度の適用上限
  3,000万円 → 1,000万円
A課税売上高にみなし仕入率を乗じて計算される簡易課税制度の適用上限
  2億円 → 5,000万円
 これにより、新たに課税事業者になる場合、簡易課税制度が適用できなくなる場合が生じますので注意が必要です。


6.帳簿および請求書等の保存上の類似点

(1)帳簿の記載要件
@相手方の氏名、名称の記載
A 取引内容の記載
B 取引年月日の記載
C 支払対価の額
D 課税・非課税の区分を記載

(2)請求書のポイント
請求書とは、売り主が交付する請求書や納品書、領収書などで、次の5項目が記載されているものを指します。
@ 書類の作成者の氏名または名称
A課税資産の譲渡を行った年月日
B 譲渡した資産または約務の内容
C 譲渡した課税資産の対価の額
D 請求書の交付を受ける事業者の氏名または名称

  ただし、次のケースについては書類の交付を受ける事業者の氏名や名称が請求書に記載されていなくても仕入税額控除は認められます。
@ 小売業、飲食店業、写真業、旅行業
A 駐車場業
B 道路運送法に規定されている一般乗用旅客自動車運送事業

(注)請求書等を紛失した場合、確定申告期限まで再交付を受けること
(仕入税額控除が否認されます)。

(3)請求書等の保存
@法人名義のクレジットカードでは使用時のご利用明細書の保存が必要
A1回当たりの取引金額が3万円未満の場合には帳簿の記載のみで足りる
B上様領収書は認められない
C 感熱紙の領収書は帳簿等の保存期間7年に耐えられない

  消費税法上は帳簿の記載のみで足りる取引については規定されていますが、あくまでも消費税法上の規定であり、法人税法上はこのような規定はありませんので必ず保存して下さい。



 

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