調査において税務署の目的は、効率よく調査をし、調査の範囲を広げることです。会社としては、なるべく指摘を受けることなく時間が過ぎ去ってくれれば、と思っていることでしょう。だからといって、調査に協力しないわけにはいきません。とにかく誠心誠意、ゆっくりと対応することを心がければいいのです。 調査のはじめに、まず会社概要を一通り訊かれます。この説明は、社長か決定権を持った人が行うとよいでしょう。 業界のことはもちろん、売上や仕入、株式公開についてなど、なるべく時間をかけて話します。実地調査期間はあらかじめ日数が決まっています。 ある会社の社長は調査初日、午後3時まで話をしたという例がありました。ただし、うっかり「援助している」とか「支援している」といった話はしないでください。要するにこれは寄付金の話ですから、余計な詮索をされることになりかねません。 それと、社長や決定権を持った人にしかわからないことがあるにしても、その場ではペンディングにしておいて、昼食時に打合せをしたほうが得策です。ですから調査中は、経理担当者と会計事務所で対応してください。社長もしくは決定権を持った人には「あとでお願いします」といっておいて、まとめて答えてもらうほうが間違いがないものです。
調査官は“税務調査”に来たわけですから、すべて税務の立場、税法に基づいて判断します。ところが会社のほうは、どうしても税務的な解釈よりも会社の都合や常識のほうを考えてしまいます。 たとえば、たな卸商品・製品の評価損の計上、売掛債権の貸倒償却の判断、損金算入の時期等々・・・・、 全体に会社側は甘く、税務署は厳しい基準で挑んできます。 こちらの解釈もある程度主張して、会社の考えを知ってもらうことは必要ですが、むしろ相手を立てるべきです。意見が食い違うなどして感情的に対立するなどは、論外です。むしろ、こういった機会に教えを受けるという態度が結果的に良いようです。 “負けて得とる”といった商売人の道もあります。相手の言い分をいれ、余裕を持った態度で接すれば、そこに何らかの合意点も見いだされるでしょう。
昼食ですが、できれば調査官を抜きにして、社長と経理担当者・会計事務所ととるほうがいいでしょう。そうすれば、午前中に出た問題の打合せや反省をし、午後からの対応に備えることができます。 昔は、飲み食いの世界で税務がひっくり返ることがありましたが、今は一切ありません。ですから調査官と昼食を一緒にとるこのになっても、なるべく質素なものにしてください。高い寿司屋や高級料亭などに連れて行くと、あらぬ疑いをかけられることになりかねません。
調査事項について質問された場合は、明確に返答すべきですが、ムダなこと、必要以上のことは喋らないことです。うっかり口をすべらせて新たな問題を起こすことがないように注意してください。 また、返答に自信がないときは、決定的な返答はしないことです。 「ちょっと調べさせてください。よく調べてから返事します」とか、「この部分の担当者が不在なため、事情がよくわかりません。明日にでも連絡しますから・・・・」などと答えて、少し時間をもらいます。 心証を悪くするかもしれませんが、単純に処理が間違っていたといったものならまだしも、大きな問題につながっているケースもあります。こうした微妙なものについては、その問題に応じて、言い方に気をつけなければなりませんが、理由をつけて回答を先に延ばすしかないでしょう。 ことに、対応者が経理の一係員であるときは、問題によっては上司や代表者と打ち合わせをしなくてはならないでしょうし、会計事務所にも相談して対処すべきでしょう。
この部分は調査されていないだろうなどとタカをくくって、脱税しようなどと考えたら、非常に危険です。いろいろ数字を操作したり、説明の際にウソをついたとしても、最近の税務署の調査システムや、豊富な調査資料によって、不正やウソは必ず発見されるものと心得てください。 もし、最初から、発見されてもダメモトという気持ちでやったのであれば、それは因果応報ということで、発見されたときは男らしく率直に振る舞うべきでしょう。その時になってジタバタするのは見苦しいだけです。
調査の終わりに、問題点・指摘等がないかを必ず確認し、できればその日に出てきたいろいろな質問・依頼事項を調査官にまとめてもらうことをお勧めします。なかには質問や依頼をしておきながら忘れてしまっている事項もあるからです。 当然、そういった事項には答えなくて済みますし、調査の段階であれば、後で打合せをすることができます。 それから、調査官に1日の総評をしてもらうこと。調査官は同業他社をたくさん見てきていますから、会社のいい面悪い面等を教えてもらうといいでしょう。調査に関することだけでなく、会社の経理や経営に関するヒントが、話の中に隠されていることと思います。また、従業員の不正を発見してくれた例もあります。 調査は嫌なものですが、数年に1度、国が無料で会社の監査をしてくれるのだと、考えれば、調査に臨む気持ちも違ってくると思います。
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